神谷 真太郎 / Shintaro Kamiya
トゥモローランド メンズバイヤー
2006年に新卒でトゥモローランドに入社し、名古屋ラシック店で販売を経験。08年に丸の内店に異動し、その3カ月後にアシスタントバイヤーに。店舗と本社を行き来する日々を送りながら、09年にバイヤーに昇格。ドレスクロージングだけではなく、カジュアルセクションの買い付けも行うことにより、時代に即した包括的な提案ができるのが強み。バイイングだけではなく、オリジナル商品の開発も行っている。トゥモローランドにおけるドレスクロージングのスペシャリストのひとり。
──ご自身のキャリアを簡単に教えてください。
販売員としてスタートしました。実は、学生のころからスーツを着て働くような仕事には就きたくないと思っていたんです。それにもかかわらず、入社以降、ずっとドレスクロージングのセクションを担当しています。もちろん、最初から楽しく働いていますけど。
──ドレスクロージングを扱う面白さはどこにありますか?
いい意味で“変わらない”ことが魅力だと思っています。トレンドの移り変わりが激しいカジュアルスタイルに比べると、ドレスクロージングは何かが大きく変わることはありません。だからこそ、微差が重要になってきます。例えば、カップラーメンって、かたちは昔から変わらないけれど、その時々でちょっとだけ変化をつけた味を発売して、飽きさせませんよね。それと同じで、ドレスクロージングも時代とともに少しずつ変化していきます。その“味付け”をどう楽しむかが醍醐味ですね。
──バイヤーとして心がけていることを教えてください。
僕らはお客様の2歩先に、店舗スタッフたちの1.5歩先にいないといけないと考えています。国内外での展示会を見て回り、工場の職人さんたちとも対話を重ね、日ごろから考えていることをシーズンごとにアウトプットしています。それが売り上げなどの数字にダイレクトに表れてくるわけですから、責任は常に感じています。
──トゥモローランドのドレスクロージングの魅力とは何でしょう?
ずばり言うと、エレガントということに尽きるでしょう。華美ではないところが魅力だと思っています。ビジネスの場において、本人以上にスーツが目立ってしまっては本末転倒です。基本的にはスーツの主張は控えめだけど、その人らしさはしっかりと主張される。そんなスタイルを目指しています。
──既製服とパーソナルオーダーの良さについて、それぞれ教えてください。
既製服は半年ごとのトレンドが反映されており、時代感を楽しむことができます。もちろん、オーダーでも肩周りの仕立てやシルエットなどにそれは現れてくるのですが、こちらはフィット感だったり、体型の見え方のバランスだったりを細かく調整できるメリットがあります。体型が変わらない限り、一度採寸してしまえば、生地を指定するだけでオーケーですし、実際、弊社は他社に比べてオーダーの割合が多いんです。1〜2カ月待てるという人はオーダーがおすすめですね。逆に既製服は、試着して自分に似合うものを探すということも楽しみのひとつだと思います。
──オーダーが人気の理由はどのような点にあると思いますか?
ドレスクロージングはサイズ感が重要で、自分の体型にあったものを着るのがベストです。弊社のスタッフは配属後、約2年間かけてオーダーについての教育を受けます。全モデルの採寸や型紙など、オーダーにおけるノウハウのすべて学んだうえでお客様と接しているので、自ずとプレゼンに熱が入ってしまうんです。と言うのも、オーダーは全社的に力を入れていて、香港や上海でもオーダー会を実施しています。バリエーションも豊富で、お客様を飽きさせないように、毎年新しいモデルを投入しているんですよ。
──この秋のトレンドについて教えてください。
スタイルとしては、ブリティッシュなムードが高まっています。代表的なものは、ブレザーにカラーパンツを合わせるようなスクールユニフォームでしょうか。今日のコーディネイトでは、カジュアルなほうがそれにあたります。これにグレイのトラウザーズを合わせてももちろんカッコいいのですが、パンツで遊びを加えるのが今シーズン流です。ここでは堅苦しく見えないように、太めのシルエットを選んで、リラックスした印象にまとめてみました。
──オーダーはどのような点に注目すればいいですか?
すでに何度かオーダー会を実施しており、人気が高かったのは、アンコン仕様のスーツです。芯地をほとんど用いずに、型紙と縫製で構築的に仕上げています。周辺にはかっちりとした装いが求められる企業が多い丸の内店のオーダー会でも、多くのお客様から発注をいただきました。着心地は軽快、見た目はエレガントな1着です。
──時代の流れに合わせて“スニーカー通勤”など取り組みもありますが、ドレスクロージングのバイヤーという立場からはどのように感じていらっしゃいますか?
これは大歓迎です。その人のパフォーマンスを上げるのがビジネスウェアですから。多様化する“働き方”に沿って、きちんとした感じを損なうことなく、その人らしいスタイルの提案をさせていただきたいと考えています。ただし、個人的には少し寂しい思いもなくはありません。正しく装ったときのドレスクロージングはやはり美しいですからね。正統派なスタイルが廃れていってほしくないな、とは思っています。
──ドレスクロージングを着用する際、自分なりのポイントはありますか?
華美にならないように心がけています。若いころは、主張の強いスーツやVゾーンなど、華やかさを意識していましたが、最近は随分と落ち着きました。例えば、ネイビー単色のスーツに、同系色でまとめたシンプルなVゾーンで、足元もシンプルな短靴やローファーなどが多くなりました。今日のスーツスタイルは、撮影用に少し華やかさを加えていますが、決して派手さはないと思います。遠くからだと無地に見えるスーツは、実はシャドーストライプが入りで、適度に主張できます。Vゾーンはクレリックカラーのシャツに小紋タイを合わせてクラシカルな印象に。全体的には正統な英国調の雰囲気に加え、季節感を意識してコーディネイトを組み立てています。
──ご自身は、どれくらいの頻度でドレスクロージングを着ますか?
週に必ず2回はスーツやジャケパンで過ごす機会があります。これはトゥモローランドの社風なのですが、月曜は週初めなので、一般の方々と同様にきちんとしたスタイルで、逆に金曜日は仕事終わりでそのまま遊びに行けるような華やかなスタイルで出社します。ですから、月曜日は正統派な、金曜日は着くずしたドレススタイル、という感じです。
──ドレスクロージングにあまりなじみがない人でも、“ここさえ押さえておけば大丈夫”というポイントを教えてください。
いちばん重要なのは、サイズ感です。まずは、自分の体型にあったスーツやジャケットを選ぶこと。これが最大のポイントです。スーツのほうが大きいと“着せられている感”が出てしまいますし、小さくても窮屈な印象を与えてしまいます。あとは着続けることが重要でしょうね。どんなことでもそうだと思いますが、すぐに上達するということはありません。どんどん着て、ドレススタイルをもっと楽しんでもらいたいですね。